【不定期連載】シベリウスと伊福部昭の作風、そしてラウダ・コンチェルタータ 8

2017年07月31日

さあみなさま、そろそろ「ラウダ・コンチェルタータ」を聴いてみようかという気分になってきた頃ではないでしょうか?
といった事で、文字で聴く「ラウダ・コンチェルタータ」をお送り致します。
こちらは、水星交響楽団のプログラムに掲載した拙文からの抜粋となります。

曲は途切れのない単一楽章。「神話的に」と書かれた弦楽器の息の長ーい憂愁のメロディーで衝撃的に始まります。
天空から降り注ぐようなホルン、息を潜めるようなオーボエ、そして原初の思いをぶつけるかのようなマリンバの無骨なモノローグ。
これはやがて現れる、めくるめくマリンバの主題提示でもあるのでした。
再びそれに答えるかのような弦楽器の憂愁のメロディー、つぶやくように静まっていくと……
地の底から響いてくるようなマリンバの低音の刻み。なんと伴奏はティンパニだけ!延々と続くマリンバの刻みに呼応するようにオーケストラが目を覚ましていく!マリンバが見得を切るようなスフォルツアンドでけりをつけると、待っていたかのように、弦楽器の壮絶な刻みがあとを紡ぎます。
ひとしきりオーケストラが活躍した後は伊福部先生の真骨頂!
なんと、ソリストにひたすら行進曲風刻みを伴奏させて、オーケストラが息のながーいながーい憂愁のメロディーを繰り広げます!
憂愁のメロディーとひたすら突き進むバーバリズム!もやはここまでか!とまで繰り返された末に、感極まったフルオーケストラの2回の叫び!
ハープに縁取られたマリンバのモノローグ、なにかを思い切るような弦楽器のメロディー、レッジェーロと書かれたゆっくりとしたマリンバの伴奏に、オーケストラの雅楽の響き。
そして長大なマリンバのカデンツア……
やがて、雪の中をひとり歩くような、ゆっくりとしたマリンバの伴奏によりそう孤高のフルートソロ。
ついにオーケストラが息を吹き返します。冒頭の弦楽器の憂愁のメロディーが回帰し、冒頭でオーボエが奏でた孤高のテーマをマリンバが大トレモロで再現です。
拍子木のようなティンパニのソロが、寄せては還す波のように静まると、ついに終末進行へののろしがあがります。
トムトムの合図とともに、ノンストップアクション!地の底から響いてくるようなマリンバの低音の刻み、呼応するオーケストラの響き!ソリストに伴奏させるオーケストラの息の長い憂愁のメロディー!!
ここで調性も変わり、マレットも変えて大コーダ!マリンバ、高音弦楽器、高音木管楽器がひたすら刻む中、低弦と金管が冒頭の憂愁のメロディーを大々的に拡張して再現します!!
これぞ日本音楽の力、繰り返しによるナチュラルトリップ!

なだれ込むように一気に終結です。指がちぎれそうです。

山本 勲
(次回へ続く)



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