不定期エッセイ 交響曲第5番への道~1~

2024年07月28日

2025年4月のアイノラ交響楽団のプログラムは美しいものになりました。

交響曲第1番、2番によって国際的に認知されはじめたシベリウスは、1904年に都会ヘルシンキの喧騒を離れて作曲に集中するため、ヤルヴェンパーにアイノラ荘を建てて移り住みました。そうして新たな形式の扉を開いた第3番は残念ながら当時の世の中に広くは受け入れられませんでした。そんな中、喉の腫瘍手術を受け、アルコールと葉巻を禁止されたシベリウスは死を覚悟した時期もあったといいます。そのような中で書かれた交響曲第4番は自身の暗闇を見つめ、言葉にならない何事かを真摯に綴った音楽と存じます。死をも予感した時期に書かれた交響曲第4番、そしてシベリウス50歳の誕生日に向けて書かれた輝かしい交響曲第5番、そこには闇の中から光に向かって再び歩き出したシベリウスの大きな変化点があったことでしょう。50歳の誕生日に初演された交響曲第5番というのは1915年版とか初稿などと呼ばれるもので、現在一般に演奏されている1919年決定稿とは異なるものでございました。初演後に悩みに悩んだシベリウスが3回の改訂を経て完成した1919年決定稿は私的にもっともフェイバリットなシベリウス作品なのですが、皆様ご存じの通り1915年初稿もオリジナルの魅力に溢れた素晴らしい作品です。どこが違うのかと言いますといろいろ違うのですが、そちらはさておき、本プログラムが美しいというのは暗闇の4番から再び光に満ちた5番の初稿への転換を追体験できるというところにございます。このプログラムを長年シベリウス作品に取り組まれている新田ユリ先生とともに音にしていくのです。なんと胸躍ることでございましょう。皆さまもぜひご一緒いたしましょう。

~続く~

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